FTMの妻、AIDの現場から。

33歳♀東京在住。AID(非配偶者間人工授精)に挑戦する夫婦の記録です。

【番外編】AID治療の自助グループの集まりに参加してみた。

 

またまた番外編です。

このブログではすべての機関において特定の固有名詞などは

敢えて伏せていますが(分かる人には分かると思いますが)、

もし個人的に教えてほしいという方がいたら

コメント欄で個別に聞いていただければ

その情報をシェアすることも全然いとわないので気軽にどうぞ。

(その際はメールアドレスの記入をお忘れなく!)

 

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以前の記事

【準備期間】一番の味方は、地元の先生かもしれない。

でも書いたのだが、

自分の中に”ひっかかり”があることに気づいた私は、

病院で紹介されたとある自助グループの勉強会に

夫婦で参加することにした。

 

この団体は、AIDによって子供を持った、

あるいは持とうと考えている人のためのための自助グループ

運営自体も、ボランティアスタッフの方々によって行われている。

年に数回開かれるこの勉強会では、

当事者の方々による体験談や、ゲストスピーカーの講演、

参加者同士の意見交換などが行われる。

 

私が参加した会には、全部でおよそ40名ほどの方が参加していた。

ほとんどが男性不妊による妊活をされている

(または検討している)方のようだが、

私と同じ境遇かな?と思われる方も数組いた。

(同じ境遇どうしだと、なんとなく雰囲気で感じるものがある)

 

まずはゲストスピーカーの方のお話から。

この日は児童養護施設の所長の方で、

血縁関係のないこどもを家族として迎え入れることについての

お話をしてくださった。

 

養子という考え方は、

私たち夫婦にも何度か話にのぼったことがある。

私はFTMの彼との結婚を決めたうえで、

子供がほしいと思っている。

その本当の理由はなんだろう?と深掘りした時に

自分の子供であるなら、養子という選択肢もあるのでは?と。

 

けれど考えた結果、

単に「子供が好きだから」ということだけではない、

やはり自分の血のつながった家族を持ちたいという

おそらくこれは、これ以外に説明がつきようもない

本能のようなものだと認識したため、

まずは可能性があるのならと、AIDを選んだのだった。

 

この所長は、ご自身でも、養子として何人も

子供を自分の家族として迎え入れているそうだ。

どの子どもたちも平等にかわいいし、

血縁関係に関係なく、心から愛しているとおっしゃっていた。

本当にすごい方がいるのだなあと思った。

ただ、その方も言っていたが、

海外では養子ももはや一般的に受け入れられており

(例:アンジェリーナ・ジョリー

日本ではまだまだ偏見や社会的な保障など

すべての点において遅れているということだった。

 

所長のお話でいちばん響いたのは、

子供を持つということが

決して親目線だけであってはならないということ。

児童施設から養子として家庭に送られる場合はあくまでも、

親が子供がほしいから、ではなく

今生きているこの子を幸せにしたいから。

という視点を持っているかが大前提となるという。

それはまったくそのとおりだなと思った。

「養子という選択肢もあるな」と考える事自体が

そもそもおこがましいのかもしれない。

 

養子にしても、AIDにしても、はたまた自然妊娠にしても。

すべてにおいて言えることだと思う。

子供がほしいと願うのは至極当然な欲求でありつつも、

それだけが目的になってはいけない。

生まれてきたすべての子供には一人ひとりその子の人生があって

どんな手段だとしても親になったらその時点で

その子の人生に責任を持たなければいけない。

あたりまえなんだけれど、うっかりすると忘れてしまいそうな

この視点に改めて気づかせてくれたのはこの所長のお話だった。

 

その後は、AID体験者の方々(多くはボランティアスタッフの方)が

みずからの苦しかった思い、決断に至るまでの葛藤、

晴れて子供を迎え入れた喜び等々を生の声で届けてくださった。

中には、過去のことを思い出して声をつまらせる方もいて、

みなさん本当に大変な思いを乗り越えてきたんだなあととても勉強になった。

男性不妊と診断された時の衝撃も、察するに余りある。

境遇は違えど、大人になって結婚したら当たり前に

子供ができて親になれると思っていたのに、

その道が残酷にも閉ざされてしまったとしたら。

その悲しみは、私自身も深く共感するところだ。

 

その後予定されていた座談会には参加できなかったが、

治療の前にこういった会に参加できたことはとてもよかったと思う。

AIDを検討されている方、まだ決心がつかない方は、

こういうところからはじめてみるのもよいと思う。